院長コラム
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第34回日本神経治療学会参加報告

2016年12月20日
横浜なみきリハビリテーション病院 院長 神経内科
阿部 仁紀

 11月4日、米子市で行われた第34回日本神経治療学会総会に参加致しました。

 下記に示しているようにこの学会には2003年より定期的に発表(そのうちの3回は論文化)しており、いわば、私のホームグランドです。今回は演題を申し込まなかったのですが、その代わりにリハビリ部門の座長の声がかかり、初めての座長として参加いたしました。不慣れな座長で申し訳なかったのですが、各先生方の発表は非常に興味深いものでした。田村理恵先生1)が発表された、「交通外傷後の引きこもりに対して外来作業療法が有効であった1症例」では、引きこもりの方に対し、外来作業療法によって4年間かけて就労に結びつけた症例報告で、根気強い関わりの重要性とともに社会参加(participation)の意義を再認識することができました。時田春樹先生2)の「脳梁幹の梗塞により後天性吃音を呈した2症例」も非常に興味深いものでした。そのうちの1例は神経内科に原著報告3)されており後天性吃を考える上で非常に貴重な報告と思われます。前田順子先生4)の「嚥下造影検査と食事場面での所見が乖離したHuntington病の1例」では、嚥下造影検査VFでは、明らかな誤嚥は否定され検査中の舞踏運動は軽度であった一方、実際の食事では開始早々に不随意運動が出現し、体幹の動揺やむせこみが出現し、昼食所要時間が85分であったとのことでした。リハビリの工夫で昼食所要時間が約60分となり、患者さんは、在宅復帰なされたとのことでした。私はVFをcapacity(ある一定の条件・環境でできる行為)、食事場面をperformance(実際に行う行為)と見立て、capacity-performance gapというコメントをいたしました。あるいはVFはfunction(機能)を見ているのかもしれません。ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health; 生活機能・障害・健康の国際分類)の考えかたではfunctionとactivity(capacityとperformance)は双方向性です。

function↔activity

VFと実際の食事の関係性を考える上で非常に興味深い症例報告でした。非常に勉強になりました。その他の先生方の発表も非常に興味深いものでした。座長の機会を与えて下さった、第34回日本神経治療学会総会 会長の中島健二先生には深謝いたします。1000名を超える参加者があったとのことで、この会の益々の発展を祈念いたしております。

参考文献

1)
田村理恵, 的場靖弘, 山本幹枝, 古和久典, 萩野浩. 交通外傷後の引きこもりに対して外来作業療法が有効であった1症例. 神経治療 2016; 33(5): S238
2)
時田春樹, 下江豊、栗山勝、田川皓一. 脳梁幹の梗塞により後天性吃音を呈した2症例. 神経治療 2016; 33(5): S238
3)
時田春樹,高松和弘. 左の脳梁幹の梗塞により後天性吃音を呈した1例. 神経内科 2016; 85(5): 555-558
4)
前田順子, 清塚鉄人, 岩本康之介, 鴻真一郎, 山口雅弘. 嚥下造影検査と食事場面での所見が乖離したHuntington病の1例. 神経治療 2016; 33(5): S238

(日本神経治療学会総会・発表・抄録)

1.
第33回日本神経治療学会総会(2015.11.26, 名古屋市, 口演)
阿部仁紀, 北史子:“Synchronized therapy”が有効であった“咀嚼・舌のすくみ”を呈したParkinson症候群の1例. 神経治療 2015; 32(5): 763
2.
第32回日本神経治療学会総会(2014.11.21, 東京, 口演)
阿部仁紀, 北史子:言葉・閉眼・舌・手指・足のすくみを呈したParkinson病患者6例の特徴とその治療の工夫. 神経治療 2014; 31(5): 643
3.
第32回日本神経治療学会総会(2014.11.21, 東京, 口演)
阿部仁紀, 北史子:姿勢異常や歩行のすくみに“P・O・ST combination therapy”が有効であったParkinson病の1例. 神経治療 2014; 31(5): 636
4.
第31回日本神経治療学会総会(2013, 11.21, 東京, 口演)
阿部仁紀, 北史子:‘指折り’が‘言葉のすくみ’に, ‘手のグーパー’が足のすくみに有効であったパーキンソン病の1例. 神経治療学 2013; 30(5): 646
5.
第30回日本神経治療学会総会(2012.11.29, 北九州市, ポスター)
阿部仁紀, 北史子:‘握り込み’“clenched fist”が認められたParkinson症候群の4例. 神経治療学 2012; 29(5): 650
6.
第29回日本神経治療学会総会(2011.11.18, 福井市, 口演)
阿部仁紀, 岡田雅仁, 黒岩義之:無動, ジストニアにマッサージ, zolpidemが有効であったParkinson病の1例. 神経治療学 2011; 28(5): 553
7.
第27回日本神経治療学会総会(2009.6.11, 熊本市, 口演)
阿部仁紀, 関晴朗, 會田隆志, 尾田宣仁
発症30年以上前より前駆症状として睡眠時周期性四肢運動が認められたParkinson病の1例. 神経治療学 2009; 26(3): 312
8.
第25回日本神経治療学会総会(2007.6.22, 仙台市, 口演)
阿部仁紀, 丹野善博, 石原哲也, 會田隆志, 関晴朗, 片山宗一, 山本悌司. ステロイドパルス療法が有効であった間欠型一酸化炭素中毒の1例. 神経治療学2007; 24(3) : 372
9.
第23回日本神経治療学会総会(2005.6.9-10, 鳥羽市, 口演)
阿部仁紀, 丹野善博, 石原哲也, 久保仁, 伊沢直樹, 片山宗一, 山本悌司. 急性期に免疫グロブリン大量静注療法が有効であった重症脊髄型多発性硬化症の1例. 神経治療学 2005; 22(3) : 394
10.
第21回日本神経治療学会総会(2003.6.11-13, 郡山市, 口演)
阿部仁紀, 斎藤直史, 高取隆, 唯木享, 横山秀二, 萩原賢一, 三澤幸辰, 谷牧夫. 気管カニューレ装着患者合併症としての気管腕頭動脈瘻からの気管出血―1救命例
神経治療学2003; 20(3): 294

(論文)

1.
阿部仁紀, 山本悌司, 岡田雅仁, 黒岩義之: マッサージが薬物調整に寄与したParkinson病の1例-補完療法の活用-. 神経治療 30: 347-351, 2013
2.
阿部仁紀, 関晴朗, 會田隆志:睡眠時周期性四肢運動と睡眠時無呼吸症候群が合併したParkinson病の1例. 神経治療 28: 67-72, 2011
3.
阿部仁紀, 丹野善博, 石原哲也, 會田隆志, 関晴朗, 片山宗一, 山本悌司:ステロイドパルス療法が有効であった一酸化炭素中毒後の遅発性白質脳症の1例. 神経治療 26: 625-631, 2009

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