院長コラム
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2020年 新年度のご挨拶

2020年4月1日
横浜なみきリハビリテーション病院 院長 神経内科
阿部 仁紀

完全な自立とは

以下の文章は、4月1日に行った新入職員へのあいさつ(年度朝礼)1)です。

 おはようございます。新入職員の皆様、当院に入職おめでとうございます。残念ながら、2020年3月11日WHOは新型コロナウィルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2;SARS-CoV-2)によって引き起こされた世界の状況をパンデミックと宣言しました。ドイツのメルケル首相の言葉を借りると『第二次大戦以来、最大の試練』の状況です。非常時は常識が非常識にもなりえます。その逆も真で非常識が常識ともなりえます。新たなウィルスに対しては、従来の常識にとらわれずに柔軟に対処する必要があるとおもわれます。2020東京オリンピックも延期となりました。しかし、暗い話題ばかりではなく、本日、皆さんを当院に迎えることが非常に明るいことです。皆さんは当院の未来を創っていく人達です。希望の光です。おおいに期待しております。このような危機の状況で頼りになるのは最新の情報も大切ですが、原点に返るという意味でフローレンス・ナイチンゲールの『看護覚え書』をまた読み直してみました。彼女は「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また、食事内容を適切に選択し適切に与えること―こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味すべきである。」2)と定義しております。

 ナイチンゲールの看護理論の中心概念は「環境」です。患者さんの周りの我々を含んだすべてのものを「環境」と捉えて、自然治癒力を高める環境整備の重要性を唱えております。

 新入職員の皆さん、皆さんが、これからは患者さんにとって非常に重要な環境になります。頑張ってください。という昨年の年度朝礼での話を復唱させて頂くとともに、今年は新たな文章を紹介いたします3)

 住居の健康 Health of Houses

住居の健康を守るためには、つぎの五つの基本的な要点がある。

  • 1.清浄な空気
  • 2.清浄な水
  • 3.効果的な排水
  • 4.清潔
  • 5.陽光

 これらのどれを欠いても住居が健康的であるはずがない。そして、これらに不備や不足があれば、それに比例して、住居は不衛生となる。

 現代では当たりまえのことかもしれませんが、ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争(1853-1856年)、そしてその体験をもとにして『看護覚え書』が著された1860年当時では当たり前ではありませんでした。当然、室内換気の重要性も記載されております。しかし、現在、医療崩壊が起こっている国もあり、このような当たり前のことができなくなっているところもあります。幸いにして、日本は、現在のところ、他国のような医療崩壊は起こっておりません。

 さて、当院の理念は「頼り頼られる病院」です。頼り頼られることを別な言葉で表現いたしますと「相互依存」です。国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんがあるインタビューで仰っていた言葉があります。

 「本当のナショナリストになろうと思ったら、本当のインターナショナリストじゃなければできないんじゃないでしょうか。完全な自立は完全な依存なんですよね。相互依存なんですよね。」
「完全な自立とは完全な相互依存である」

「完全な自立とは完全な相互依存である」とは…

 「完全な自己の自立とは、自分の実力を見極め(本当のナショナリストになる)、他者の実力を認める(本当のインターナショナリストになる)ことで、つまり、自分の不得手のところは他者に頼り、自分の得意なところは他者から頼られる(相互依存する)ことで達成される」ということです。自分の得意な分野をもつことが重要です。

 今日から当院の職員となるみなさんは、先輩方にどんどん頼ってください、そして、いつか自分の得意なところを持ち、他者から頼られる存在となったときに真の自己の自立がえられると思われます。がんばってください。

  1. 今回は例年おこなっている看護部長、事務長、院長の年度朝礼を省き、院長だけが年度朝礼を行いました。職員も例年ならば、全職員が対象なのですが、昇格者 5名、新入職員20名と管理職だけが第一リハビリ室に集まり、辞令交付式とその後年度朝礼が行われました。参加しなかった職員もこのコラムを読むように通達しております。
  2. Nightingale F. Notes on Nursing: What it is, and what it is not. New edition, revised and enlarged. Harrison, London, 1860.(湯槇ます、薄井坦子、小玉香津子、田村眞、小南吉彦 訳. 看護覚え書―看護であること 看護でないこと―(改訳第7版). 東京: 現代社; 2012: p14-15.)
  3. Nightingale F. Notes on Nursing: What it is, and what it is not. New edition, revised and enlarged. Harrison, London, 1860.(湯槇ます、薄井坦子、小玉香津子、田村眞、小南吉彦 訳. 看護覚え書―看護であること 看護でないこと―(改訳第7版). 東京: 現代社; 2012: p43.)

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