院長コラム
最前線ドクターならではの医療情報をお届けします

2022年の年頭朝礼 〜 時代に愛し愛される病院

2022年1月13日
横浜なみきリハビリテーション病院 院長 脳神経内科
阿部 仁紀

1月4日、富岡八幡宮(金沢区)の(おごそ)かな雰囲気の中、3役と総務課長の4人で初詣がおこなわれ、4人が心を1つにし、長引くコロナ禍での医療安全が祈願されました。その後、初仕事前に年頭朝礼が当院第1リハビリテーション室で行われました。

私の読んだ当日の原稿を一部訂正し、下記に示しました。当院の未来創造戦略を御理解していただければ幸いです。


明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
昨年1年間、令和3年はコロナに始まりコロナで終わったコロナ時代でした。数名の職員がCOVID-19に罹患いたしましたが、幸い院内に広がることはなく、1名の入院患者さんも新型コロナウイルスに感染することなく1年を終えることができました。これも感染制御チームInfection Control Team(ICT)を中心とした全職員がユニバーサルマスキング(職員だけでなく入院患者さんも対面ではマスクをする)や定められた行動指針等を厳守したおかげと思っております。みなさん、本当にありがとうございます。今後もコロナ禍は続くと思われ、臨機応変な行動が求められます。何卒よろしくお願いいたします。

今日は…というか、12月には「頼り頼られる病院」という当院の理念の話をいたしましたので、今日も理念の話をいたします。

みなさんが属する中央医科グループ(Central Medical System; CMS)は、イムスグループ(Itabashi Medical System;IMS:総職員数24,395名、令和3年4月現在)(文献1)、戸田中央医科グループ(Toda Medical Group;TMG:総職員数約15,000名)(文献2)、上尾中央医科グループ(Ageo Medical Group;AMG:総職員数19,305名、令和3年4月現在)(文献3)からなる民間医療グループです。グループ共通の理念が『愛し愛される病院』です。言葉の力は強力です。「自由・平等・博愛」の理念がフランス革命を導いたように、この理念によって約58,700名の職員を要する中央医科グループが築かれました。私はこの理念の意味を2015年4月の年度朝礼で話しました。約7年前の話で、人も入れ替わっており、聞いていない人も多いと思いますので再度お話いたします。このときは新入職員を主な対象として話をいたしました。それでは始めます。

中央医科グループの「病院の理念」は『愛し愛される病院』です。この理念は板橋、戸田、そして、上尾中央医科グループの共通の理念です。当院が属する上尾中央医科グループは2014年に50周年を迎えました。半世紀以上使われている理念です。この理念を私なりに解釈しました。

誰を愛し、誰から愛されるのでしょうか。対象は誰か?大きく分けて3つあります。

  • ①患者・家族
  • ②病院の近隣の人々
  • ③職員

よい理念は短い方がいい。そうすると、時代にあった新たな意味が生まれます。新たな意味は ④他の病院・クリニック です。病院が他の病院を愛し、他の病院から愛される、病ー病連携、病ー診連携ですね。おそらく50年前にはなかった言葉です。よって私の解釈は 患者・家族に、近隣の人々に、職員に、他の病院に愛し愛される病院 となります。

“Give, be given 与え、与えられる”

自分の欲しいものは、まず相手にあげる、すると巡り巡って与えられます。逆に、与えられれば、与えます。となると思われます。

優しくされたいなら、優しくする。優しくすれば、優しくされる。(当然、いつもそうとは、かぎりませんが)褒められたいなら、相手を褒める。

職場は、ただお金を稼ぐ場所という意味だけではさびしい。職場を愛すると、職場に愛される。愛されているから愛する。例えば、居心地が悪いのは、相手のせいと考えるより、むしろ自分が変わる。すると相手も変わります。新しい職場は違和感があります。そのとき、変だと思って周りを変えようとすると、自分が浮いてしまいます。まず自分を変えた方がいい。すると、環境も変わる。

毎年新しい人が入ると職場は活性化されます。ただあまりそれを意識しないほうがいい。自然に変わる。先ほど「褒められたいなら褒める」と言いましたが、場合によっては、しかられることもあります。でもそれは、その人のためです。浮いてしまわないように、なじむためです。怒られることをおそれなくていい。病院は人の命を預かるところであるから真剣であり、そういうこともあります。わからないことは教わる。新しい環境は知らないのが当たり前です。自分の殻を破るチャンスです。新入職員の人方々は、初めのうちはすべての方が“その職場の卵”です。どんどん質問してください。分からないのをそのままにしないで下さい。そして常に努力し続けて下さい。石の上にも3年という言葉があります。例えば、医師が医師になるには何年かかるのでしょうか?1, 2年目の医師は医師ではありません。研修医、“医者の卵”です。何年たてば殻をやぶることができるのでしょうか?私の師が仰っていた言葉で、「なんでも千例」という言葉があります。千例の患者さんをみれば何かが言えるという意味です。外科の先生なら千例手術をしたひとの意見なら聞く耳を持つでしょう。数だけではないのですが数も実力を示す指標です。へただと手術をさせてもらうことができません。殻が破れて、医師になれたときに、患者・御家族から「ありがとうございました。」という最高のプレゼントをもらうことができます。

病院を思う力が強いと、必ず病院からよく思われます。まず与えることを考えて欲しい。僕は昨日、一日中このことを考えていました。考えれば、考えられると思っているから。以上です。

これが2015年4月に新入職員が入ったときの挨拶でした(一部変更)。ホームページにアップしようと思ったのですが、直感的に何か違うと思いアップいたしませんでした。

昨日たまたま第53回AMG学会抄録集(文献4)を手にしました。そこには学会長として船橋総合病院の塚本院長の言葉がありました。塚本先生は私が勝手に思い込んでいるのですが、院長として私の師匠です(ちなみに、私の師匠は香中伸一郎前院長、大島行彦元院長、山本悌司元福島県立医科大学神経内科教授等々たくさんおります)。その師匠の言葉に 地域に、患者に、職員に、時代に愛し愛される病院・施設であるということは、AMGグループの原点であり、大きな強みであると考えます。 とありました。

さすが、師匠。私は、時代にあった新たな意味として「他の病院に愛される病院」としましたが、確かに「時代に愛される病院」としたほうが、より良い解釈と思われます。

地域に、患者に、職員に、時代に愛し愛される病院・施設

では、時代に愛される病院とはどのような病院なのでしょう?

春秋(しゅんじゅう)戦国時代の❛戦国❜という言葉を定義した『戦国策』という中国の書物があります。『戦国策』は、主として戦国時代(西暦前四〇三~前二二一年)における説客たちの権謀術数を書きとどめた記録文学であり、歴史物語である(文献5)。戦国時代は、戦国の七雄、秦、楚、斉、燕、趙、魏、韓の勃興の物語です。キングダムという漫画、アニメでも描かれている時代です。僕は趙の天才軍師・李牧(りぼく)と秦の六大将軍の一人、王翦(おうせん)大将軍が好きです(文献6)。私としては漫画には出ていないのですが、この時代の『韓非子』(文献7)で有名な韓非が最も好きな歴史上の人物です。

『戦国策』の解題(文献8)時代に適応したものは生き残り、それに失敗したものは滅びる。この理屈は、今も昔も変わらない。 とありました。中国ではお分かりのように遠交近攻という戦略、遠交は遠国、遠くの国と交わる、仲良くする、そして近攻、近くの国を攻める遠交近攻戦略と韓非子の思想、法家、法律を取り入れたことで最終的に秦が生き残りました。秦が時代に愛されました。

では、コロナの時代に生き残る、すなわちコロナの時代に愛される病院とは…

健康なひとがコロナ感染を恐れず気楽に病院に行って受けるワクチン接種(新型コロナワクチンに関し、当院では1日約70名、市民接種累計6027件実施)、健康診断(健診)、あるいは病院が企業等に赴いて健診を行う巡回健康診断は国が目標とする「健康寿命の延伸(注1)」の疾病予防・重症化予防には必須の事業です。当院は健診に関しましては時間的空間的ゾーニングで午前中は健康な人をみる健診・人間ドックに特化しております。コロナの時代は当分続きます。なぜならば、グローバル化が進んだおかげで、全世界でコロナが収束しないかぎり、コロナは日本でも収束しません。コロナは日本だけの問題ではありません。コロナの時代になっていやがおうでも世界のコロナ情勢を考えざるを得ません。コロナが我々の認識を明らかに変えました。そして、市民の方々が、一度当院で健診に来て満足していただければ、コロナが収束しても、継続して当院に来るでしょう。ピンチはチャンスです。そのためには我々は、ソーニングだけではなく、中味、ホスピタリティ・接遇のレベルを1段上げなければなりません。患者さんだけでなく一般のひとをみるようになるのですから、今までと同じ意識では上手くいかないと思われます。経営学から言えば、市場マーケットは病気の人だけでなく一般の人に広がるわけですから、非常に大きくなります。伸び代は非常に大きい分野です。

「頼り頼られる病院」というのは当院、400名強の職員のための理念です。しかし、「愛し愛される病院」は中央医科グループ6万人弱、約150倍の職員のための理念です。私はこの理念を「中央医科グループの根本理念」と勝手に名づけております。この理念をもっと抽象化すると宗教になります。キリスト教のなにも見返りをもとめない無償の愛(アガペーagape、カリタスcaritas)、儒教の仁です。

「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ」by ピーター・ドラッカー。より良い未来を創るためには、…「愛し愛される病院」という根本理念に立ち還り、みんなで精進していきましょう。…以上です。


以上が1月4日の年頭朝礼でした。普段の朝礼では看護部長、事務長そして私の順に話をいたしますが、この日は私のみで、10分以上に亘って話を聞いてくれた職員のみなさんに感謝いたします。

文献

  1. 医療法人 IMS(イムス)グループ ホームページ
  2. 戸田中央医科グループ Toda Medical Group(TMG) ホームページ
  3. 上尾中央医科グループ Ageo Medical Group(AMG) ホームページ
  4. 塚本哲也. 第53回AMG学会テーマ『先手!愛し愛される病院・施設に立ち還ろう』 「第53回AMG学会の開催にあたって」. 第53回AMG学会 抄録集. 上尾中央医科グループ;2018. p. 4.
  5. (まつ)(えだ)(しげ)()竹内(たけうち)(よしみ)[監修]. 守屋(もりや)(ひろし)[訳]. 劉向(りゅうきょう)編. 戦国策. 東京:徳間文庫;2008. p. 17.
  6. 原 泰久. キングダム62. 東京:集英社:2021. p65.
  7. 金谷 治(訳注). 韓非子. 東京:岩波文庫;1994.
  8. (まつ)(えだ)(しげ)()竹内(たけうち)(よしみ)[監修]. 守屋(もりや)(ひろし)[訳]. 劉向(りゅうきょう)編. 戦国策. 東京:徳間文庫;2008. p. 38.

  1. 2019年5月厚生労働省は「健康寿命延伸プラン」を作成しました。その中では、『①次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成 ② 疾病予防・重症化予防 ③ 介護予防・フレイル対策、認知症予防の3つの分野により、2040年までに男女ともに健康寿命を3年以上延伸し(2016年比)、75歳以上にすることを目指す』と記載されております。「健康寿命の延伸」は現在の医療のキーワードと思われます。

ページトップへ

院長コラム