理学療法士の渡辺です。6月11日に上記の研究会に参加させていただきました。約70名の医師やセラピストがディスカッションすることが出来、有意義な時間を過ごすことができました。
一般演題は3演題あり、当院からは言語聴覚士の藤木さんが症例報告を行いました。堂々と先生方の前で発表する姿に同期として感激し、自分自身のモチベーションにも繋がりました。その後も済生会神奈川病院の川上先生、登戸内科・脳神経クリニックの三上先生が発表され、医師とセラピストの各々の視点から論議がなされました。
特別講演では、「姿勢異常のリハビリテーション」について順天堂大学医学部付属順天堂医院の長岡正範先生からご講演頂きました。姿勢異常とはパーキンソン病患者の主症状であり、一般的に首下がり・腰曲がり・前傾姿勢などが挙げられますが、今回は首下がりの研究とリハビリテーションとの連携についてお聞きすることが出来ました。
首下がりは、①頸部屈筋の過緊張(ジストニア)と②頚部伸筋の筋力低下によって生じていることが仮説として挙げられていました。しかし長岡先生が行った表面筋電図での研究では、頚部屈筋(胸鎖乳突筋など)の筋活動はみられず、頚部伸筋(肩甲挙筋、僧帽筋など)の筋活動が著明に現れていました。つまり頚部を下げる筋活動はないが、代償的に頚部(頭部)を持ち上げる筋が活動しているため相反的な関係性が強く、首下がりについてはジストニアの関与は考えにくいという結果でした。首下がりが改善した例は、リハビリテーションにおいて姿勢に対する介入を行っており、メカニカルな要素だけでなく対象者の全身を評価することの重要さを再確認しました。座長の阿部先生をはじめ、多くの医師とセラピストがこの講演についてディスカッションし、職種の壁を越えて意見交換することができました。
その後は阿部先生と参加したセラピスト9名で今回の総評と来年度の研究会に向けて、反省会を行いました。また有意義な意見交換の場になるよう、精進したいと思いました。阿部先生ごちそうさまでした。そして藤木さん発表お疲れ様でした。
言語聴覚士の藤木です。今回、「リハビリと薬物の併用によって嚥下障害が改善した進行性核上性麻痺の一例」と題して症例報告をさせて頂きました。本例は、口唇閉鎖、咀嚼、食塊移送に障害を認めました。当初は食事に1時間もかかり、1日2食しか食べられず、閉口障害のため流涎や食べこぼしも非常に多い状態でした。VFによって、嚥下障害の原因が “off時の咀嚼と舌のすくみ”と判明しました。服薬時間を食前に変更したことで、off時の咀嚼と舌のすくみに改善がみられました。それが契機となり、段階的経口摂取訓練が進み、最終的に食形態がゼリー食から軟飯、軟菜一口大に改善しました。食事時間は30分に短縮し、1日3食食べられるようになりました。閉口障害も改善し、結果的に流涎・食べこぼし軽減の要因となりました。頚部筋群の筋緊張亢進、右肩関節の可動域制限や疼痛を認めたことも、動作を含む食事時間の延長の原因として考えられました。本例は、嚥下障害に対し、薬物調整とリハビリの併用が非常に有効であったと思われます。