パーキンソン病のリハビリに当たってのワンポイントアドバイス(7)
-Activities(活動性、いろいろな行為)-

2014年2月21日
横浜なみきリハビリテーション病院 副院長 神経内科
阿部 仁紀

しばらくブログを更新していなかった(ブログのactivityがなかった)ので、どうしたのかと心配なされる方もおり、2013年の私の主な院外のactivityを記してみました。

I. 原著論文(症例報告)
阿部仁紀, 山本悌司, 岡田雅仁, 黒岩義之: マッサージが薬物調整に寄与したParkinson病の1例-補完療法の活用-. 神経治療学 30(3): 347-351, 2013
II. 学会発表・抄録
  1. 第204回日本神経学会関東・甲信越地方会(3月2日, 東京, 口演)
    阿部仁紀, 島村秀樹, 北史子:‘指折り’が‘言葉のすくみ’に, ‘手の意図的反復性屈伸’が足のすくみに有効であったパーキンソン病の75歳女性例. 臨床神経学 2013; 53(10): 854
  2. 第31回日本神経治療学会総会(11月21日, 東京, 口演)
    阿部仁紀, 北史子:‘指折り’が‘言葉のすくみ’に, ‘手のグーパー’が足のすくみに有効であったParkinson病の1例. 神経治療学 2013; 30(5): 646
III. 講演会
  1. 第10回神奈川ニューロサイエンスセミナー(1月11日, 新横浜プリンスホテル)
    〈症例報告〉「マッサージが薬物調整に寄与したParkinson病の1例‐on期のリハビリとoff期のリハビリ‐」
    〈パネルディスカッション〉テーマ「パーキンソン病の病態抑止とリハビリテーション」パネリスト
  2. 「第1回パーキンソン病とリハビリテーション研究会」(6月27日, ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル) 一般演題(講演)
    ①「‘指折り’が、‘言葉のすくみ’に‘手のグーパー’が足のすくみに有効であったパーキンソン病の1例」
    ②「作業療法と理学療法が‘言葉のすくみ’に有効であったパーキンソン病の1例-入院にての加療-」
  3. かながわ難病相談・支援センター 神経難病講演会(12月21日, 神奈川県民センター) 「パーキンソン病を中心としたリハビリテーション(脊髄小脳変性症・多系統萎縮症を含む)」

 以上が2013年の私の院外activityです。ちなみに、ブログを記すことや院外活動は当然、私にとってサブのことで、主な活動は病棟の入院患者さんを治療すること(常時10名以上のパーキンソン病の患者さんが入院しております)や外来診療です。

 Activityはactive(活動的な、活発な)の名詞形で、抽象的には、「活動性」、具体的には「能動的な行為」と私は訳しております。
患者さんのactivityの指標は色々あります。 ADL(activities of daily living)もその一つです。
ADLとは、抽象的には「日常生活の活動性」、具体的には「日常生活の(能動的な)行為」で、食事や洗顔、整髪などの行為を示します[日常生活活動(動作)と訳されておりますが、良い訳とは思われないので、私は普段はエーディエルと言っております]。
ADLだけがactivityの指標ではありません。
ホーキング博士のようにADL(体のactivity)が低くても、頭のactivityが高く、世界に影響力がある人もおられ、社会性を重視したQOL(quality of life)(生命・生活・人生の質)も別のactivityの指標です。
以前structure(構造)とfunction(機能)のことを記しましたが、structureとfunctionを維持するのには、activity(活動性)が必要です。
例えば、家が健康である(structureとfunctionが維持されている)には、人が住む(家のactivityが高い)ことが必要です。
もし人が住まなくなれば朽ち果てます。

車やバイクも購入しただけで、(状況にもよりますが)ある程度使わなければ、使ってやらなければ(activityがなければ)、調子が悪くなります。
このように、いくらstructureやfunctionがある時点で問題なくても、activityがなければ、structureやfunctionは維持できません。
Structureとfunctionを維持するには、適度なactivityが必要です。
体のactivityを維持するには体を使う、頭のactivityを維持するには頭を使うことが大切です。
リハビリの基本はその人の可能なかぎりのactivityを活用することです。

 先日(2月15日、神奈川に大雪が降った翌日で、交通は所々麻痺していた日)、新横浜グレイスホテルにて『パーキンソン病治療講演会』が行われました。
その際の開会の挨拶を述べる機会を賜りましたので、最近の私のactivityの一つとしてここに掲載します。


 本日は、ご多忙のところ、また、悪天候にも関わらず、本講演会にご参加頂き、有難うございます。
横浜なみきリハビリテーション病院 神経内科の阿部と申します。パーキンソン病の治療は非常に奥が深いと思われます。
患者は医師の前で普段以上の事が可能になることが時に認められます。
『先生の前では歩けるんです』なとど言われることがあり、私は、それがパーキンソン病の治療の面白さ、パーキンソン病治療のモチベーションの一つと思っております。
一般的にはその現象を『プラセポ効果(現象)』ということになるのでしょうが、私はそれを“phenomenon of best performances in front of the doctor”と勝手に名づけております。薬を出す先生によって効果が微妙に違うのでは、と密かに思っております。
本日は、非常に臨床経験が豊富な3人の先生方からロチゴチンの使用経験をお話して頂き、この新たな薬の特質を、エビデンスはもちろん、エビデンスとは別の、使用した印象なども踏まえた話が聞くことができるのではないかと思っております。
特に、特別講演の演者である阿部隆志先生は、本日の交通のアクセスが非常に悪い中、岩手からお越し下さり、ありがとうございます。
阿部先生はご自分のクリニックで沢山の患者を診るだけでなく、それを論文にしておられ、非常にactivityの高い先生で、先生の御発表を聞いた後は、勇気付けられ、私もやらなければと、その場では思うのですが、なかなか持続しません。
密かに御尊敬申し上げていた先生で、本日のお話も非常に楽しみにしております。
先日、NHKテレビの『きょうの健康』で、国立精神・神経医療研究センター パーキンソン病・運動障害疾患センター センター長の村田美穂先生が、「薬とリハビリは車の両輪」であり、またそれらの早期からの活用の重要性を述べておられました。
薬物療法はもちろんリハビリの重要性はますます高まると思われます。
最後に、best performanceを見せてくださる患者さんに対し、我々も、bestな知識、論文に書いてあるだけではない、実践的な知識を身につけて、患者さんに答えていきたいと思います。活発な質問、討論を期待しております。以上です。


 阿部隆志先生のクリニックには広いリハ室とセラピストが4名おり、積極的にリハビリに取り組んでおられます。
この後情報交換会の席で、阿部隆志先生と直接お話した際に、足のすくみにスクワットが有効であると仰っておられ、すくみ対して、薬の効かないすくみ(on時のすくみ)にはいろいろな工夫が大切であることを実感しました。
ちなみに私も上記でお示しした、すくみに対し指折りやグーパーを行い、発表しております。